奈良に春の訪れを告げるイベントと言えば、東大寺二月堂のお水取り(おみずとり)があります。
毎年たくさんの人がこの場所に集まり、一年の無病息災を祈るこの行事。何となくテレビで見たことはあるけれど、あまり詳しく知らないという方も多いのではないでしょうか?
今回はこのお水取りを中心とした、東大寺修二会(とうだいじしゅにえ)についてご紹介します。
お水取りの声明(しょうみょう)とは?音楽の源流?
東大寺の修二会(しゅにえ)は、奈良時代にこの寺が創建されてから現在まで、一度も絶えることなく続いてきた不退の行。長い歴史の中には度重なる火災や戦争など、幾度とない困難があったにもかかわらず、実に1260年以上も続いています。
もともと国の安定や民の幸福を祈って建立された東大寺。
その願いは現在も変わらず、無病息災を祈る人々のより所となっています。
修二会は、二月堂のご本尊である十二面観世音菩薩の前で日常の様々な過ちを懺悔(ざんげ)すると同時に、幸せを願って行われるもので、そのクライマックスともいえるのが、3月12日(実際には13日深夜)の“お水取り”と呼ばれる儀式です。
ご本尊にお供えするお香水を井戸からくみ上げるのが、このお水取り。さらにその儀式を支える練行衆(れんぎょうしゅう)の明かりとして灯されるのが“お松明”(おたいまつ)です 。
いずれも百聞は一見に如かず、まずは映像でその様子をご覧いただきましょう。
動画:2016.3.10(木)・二月堂修二会(お水取り)(奈良市)
明かりというと、何となくボワッとした提灯の明かりのようなイメージですが、このお松明はダイナミックそのもの。
いつ建物に燃え移るのではないかとヒヤヒヤする程でしたね。
実際には2月から始まり約1ヶ月間に亘って様々な行が行われる東大寺修二会、お水取りやお松明の他にも見所があります。
その一つが“声明(しょうみょう)”と呼ばれるもの。平たく言うと、仏教で唱えられるお経に節が付いた歌のようなものです。
仏教発祥の地インドから中国、さらに日本へと伝わった声明は、主に法要などの儀礼の場で使われ、その旋律や音階は現在の日本語歌詞の源流とも言われているようです。
ちなみに、こちらも実際にあなたの耳で聴いていただきたいと思います。
動画:東大寺「修正会」声明
確かに最近では、お寺を会場としたコンサートが開かれたり、お経とジャズを融合させたユニークなお坊さんもいらっしゃるよう…声明が音楽の原点であるというのも、あながち嘘ではないのかもしれませんね。
東大寺修二会って、いつ頃開催してるの?場所はどこ?
毎年遠方からもそのご利益にあやかろうという人で溢れる東大寺修二会。一般の方が体感し、楽しむとするならば3月に入ってから。
2017年の今年は3月1日(水)~3月14日(火)となります。
期間中は毎日お松明が焚かれますが、お水取りがある12~13日は入場規制がかかる程、本当に混雑するようです。
東大寺修二会を満喫するなら平日の方が良さそうですね。
東大寺はJR近鉄奈良駅から循環バスに乗って大仏殿春日大社前で下車徒歩5分。また近鉄奈良駅からでも徒歩20分程度と散歩がてら歩いても、ちょうどいい位の距離です。
↓下記に地図を掲載しているので、参考にしてくださいね。
二月堂で上げられるお松明(たいまつ)の火の粉を浴びると無病息災!?
最後にもう一つ、動画でもご覧いただいたあのダイナミックなお松明。二月堂の舞台へ順に上っていく様は荘厳な雰囲気を漂わせ、大量の火の粉が舞っていましたね。
実はあのお松明、ただ遠くから眺めているだけではなく、できれば近くで見るべきものなんです。
修二会では毎日10本のお松明が出るようですが、この火の粉を被ると無病息災のご利益があるのだとか。
ご本尊に向かって懺悔(ざんげ)した後は、火の粉でさらに穢(けが)れを払う。これこそが東大寺修二会の醍醐味なのかもしれませんね。
まとめ
最近は、お寺を巡るツアーや御朱印集めを趣味とする若い人が増えています。
それでなくとも、神聖なスポットを訪れると気持ちが洗われるような思いがするものです。
三月といえばまだまだ寒さが一番厳しい季節。
長い歴史の中では、雨や雪模様の修二会も珍しくありません。くれぐれも防寒対策はしっかりと、年に一度の壮大なひと時をご堪能下さい。